生鮮食品などの分析では”迅速さ”が不可欠です。しかし、実際には分析試料から対象物質を分離する”抽出”や、抽出物から妨害成分を取り除く”精製”などの前処理操作に長時間を要しています。 そこで私たちは、分散固相抽出法やミクロ固相抽出法(SPME)などの簡便な抽出・精製法に着目し、これらの方法を適用した迅速な残留農薬分析法などの開発に取り組んでいます。 |
食品分析では分析試料の前処理操作や高速液体クロマトグラフィーによる測定において、有害な有機溶媒を使用します。そのため、環境や分析者へのリスクが無視できません。 私たちは、水を高圧にしながら100℃以上に加熱すると、有機化合物の溶解度が増加することに着目しました。この状態の水(超高温水)を有機溶媒の代替に使用した超高温水クロマトグラフィー(SWC)や超高温水抽出法(SWE)などの”グリーン”な食品分析法の開発に取り組んでいます。 |
食品分析では精確な(正しくて再現性がよい)分析結果を得ることは簡単ではありません。私たちは、最も精確な分析法とされる同位体希釈質量分析法(IDMS)においても、マトリックス効果のために正しい分析結果が得られないことを報告しています。マトリックス効果とは、食品由来成分を含む試料溶液と、これを含まない標準液とでは応答感度が異なる現象です。 より精確な食品分析を可能とするために、現在、IDMSにおけるマトリックス効果の機構解明に取り組んでいます。 |
分析値の信頼性を確保するために、試験所(分析機関)は技能試験に参加する必要があります。技能試験は試験所間比較試験の一形態です。主催者から配布された分析試料を複数の試験所が分析し、その結果を比較することで、各試験所の技能を客観的に評価することができます。 現在、技能試験が実施されているのは、ごく限られた分析項目についてだけです。そこで、私たちは下痢性貝毒分析に関する技能試験を主催するとともに、そのために分析試料の調製法などを研究しています。 |